なぜこれが重要か
プロジェクトの推進にあたり、他の組織に協力を求めなければならないシーンは沢山ある。この記事では他組織への仕事の依頼をする場合の交渉事例を記録する。
他組織への依頼が上手くいかない場合、作業や検討を実施できる能力や稼働の確保ができず、プロジェクトの推進に支障をきたすため重要な交渉である。
本記事での用語の定義
- 「依頼」・「相談」:自分たちは依頼したいのだが、依頼先にはまず「相談」という形で持ち掛けるため、本記事では「依頼」と「相談」をほぼ同義として使っていく。
- 「適任組織」:作業・検討を実施するにふさわしい役割を持った組織のこと
相談のステップ
相談は、いきなり相手に持ち掛けず、次の手順で準備を行ってから進める。
- 相談先組織の検討
- 相談内容の頭出し
- 相談前の準備
- 相談実施時のポイント
- 宿題の速やかな実行(鉄は冷めないうちに打つ)
それでは各順序を一つずつ整理していく。
相談先組織の検討
相談を持ち掛ける組織はどこがよいか。相談先の検討方法は次の2パターンがあり、それぞれメリット・デメリットがある。
パターン②のほうが、適任組織に相談を持ち掛けるときに協力者を増やす事が出来る可能性があるため、できればパターン②がよい。ちなみに私のPMはパターン②の方法をとることが多い。
パターン | メリット | デメリット |
①自分たちで適任組織を見つけて相談する | 始めから適任組織(と想定)に相談を開始できるため、素早く進められる | 相談先を誤るリスクがあり、その場合、解決までの時間が伸びる |
②社内を統括する企画部などに、適任組織を見つけることから相談する | 適切な相談先を見つれられる可能性が高い 適任組織を紹介してもらうことで、適任組織へ相談を持ち掛けるときに後押ししてもらえる(仲間になってもらえる)可能性がある。 | 1ステップ置くため、適任組織に相談を開始するまでに時間を要する |
相談内容の頭出し
相談相手を決めたら相手に相談の頭出しをして、日程を設定する。
この時、相談当日の作戦を考えるために相手の反応を把握しよう。
例えば下記のような反応を把握する。
- 拒絶反応の程度とその背景・理由
- 疑問に感じている部分はあるか
- 相談当日までに要求する情報等はあるか
反応を確認するために、つぎのようなフレーズで相手に問いかけを行う。
現時点で何か不安要素や疑問点はありますか?相談日までに準備させてもらいます。

相談前の準備
頭出し後の相手の反応を考慮した準備
相談の頭出しを行ったときに相手が拒絶反応を示す場合は、何らかの不安を感じていることが多い。
そんな場合は次のことを準備しよう。
- 相手の不安を解消するような相談ストーリーで相談を組み立てていく。
- 相談相手の不安の背景にあるものや、その人の特徴を把握するため、身近にいるメンバーに相談相手の人物像や相談相手が今置かれている状況を聞くのもよい。
相手が心配性な性格だとか、業務過多な状況に追い込まれている状況にあるなど、相手の状況を把握できるかもしれない。 - 心理学に基づいた交渉術もあるらしいので、ネットで調べて戦略に活かすのもよい。
説明ストーリーの準備
相手への説明は、いきなり詳細の話に入るのではなく、概要など大きな背景から入るようにする
■説明ストーリーの例
- プロジェクト概要
- これまでの経緯と困っている内容
- 相談内容
交渉が上手くいかない場合の落としどころ・妥協点の準備
相談が上手くいかないことも想定し、相談時にどんな状況までなら自分たちが妥協できるかをあらかじめ決めておく。
■落としどころ・妥協点の例
- 依頼したい作業の量・実施期限に問題がある場合は、どの程度の量と期限ならできるか聞き出し、聞き出した量・期限を持ち帰り再検討する
- 何かこちら側で準備すれば可能かなど、相手が実施できる状態にできる条件を聞き出す
- 相談先の組織が適任組織でないという回答なら、どこの組織が適任組織かを聞き出す
宿題の速やかな実行(鉄は冷めないうちに打つ)
- 相手が一定の理解を示し、追加情報をくれたら検討してくれると言ってくれた場合は、時間を空けずにすぐに追加情報を提供する
- これは、相手が相談に乗ってもよいと考えていることであるため、相手の気持ちが冷めないうちに行動する。
相談時のポイント
相手の意見を受け止める
相手を肯定する姿勢を示すことで、相手は自分のことを受け入れられたという気持ちになり、良好なコミュニケーションを行う環境を整えることが出来る。
■具体的案方法は次のような行姿勢で相手の話を聞く
- 相槌を打ちながら聞く
- 相手の話の途中で発言しない
- 相手が話した要点をリピートして受け取る
「なるほど、○○なんですね」 - いきなり否定せず、いったん相手の意見を受け止める言葉から入る
「なるほど、よくわかりました。」
「そういう事情があるのですね。では…」
「確かにそうですね、私たちも…」
その他のポイント
- 相手には納得できる理由を伝える。逆に相手からも納得のいく説明を得る。
(納得できない理由で相手の要求はのまない) - 相手の拒否する理由の一定量を理解できるのであれば、拒否する理由を考慮した妥協点を探る
どこまでならできるか、何(どんな条件)があれば引き受けれるか - 納得いかない拒否理由の場合は、納得できる根拠の提示を求める(打合せ後や次回打合せ時に回答をもらう)
- こちらのスケジュール感はしっかり伝えて、必要な期限までに相手の回答を得られるように進める。
まとめ
仕事の依頼は少なからず相手にとっては抵抗感のある話である。そのため、できるだけ真摯に対応し相手の不安や負担を解消できるよう交渉する。
ただし、相手の組織がすべき役割を果たす意識がないことが分かった時は、じっくり交渉し相手に役割を認識してもらい、仕事を引き受けてもらえるよう進めたい。
人との交渉ごとのため、1回の相談で引き受けてもらえるとは思わず、最初から2回目、3回目の交渉の場が必要だという意識を持って進めることが肝要だ。
■この記事を書いて気付いたこと
私は交渉事のみならず、まずもって人と何かを調整することが億劫と感じてしまう人間性のため、こと交渉事となると避けて通ってきていることを痛感する。
人が生きていくためには人との係わりあいは必須であるため、交渉の場から逃げずに経験を積み、苦手意識を克服していきたいと感じた。