これを実施する目的/なぜこれが重要か
ついつい私が忘れてしまうのがこのエスカレーション(以下、「エスカレ」)です。会社という組織でプロジェクトを動かしている以上、必然的にやらなければいけないのが上司や会社上層部へのエスカレです。
もしエスカレを忘れると、重要な節目で上司や幹部から「聞いていない」「誰がGOを出したんだ」などと先へ進めない状況が生じてしまいます。
このようなことがないように、エスカレの目的は次のようなものになります。
- 組織から承認をもらってプロジェクトを動かす=予算・リスク・人員体制の承認など
- 幹部を味方につけて社内の協議や意思決定を後押ししてもらい、プロジェクトを推進しやすくする
- 上司にプロジェクトの進捗状況を共有して、上司が幹部層にいつでも説明できる状態にする。
- その他
エスカレのタイミング
プロジェクトや業種によりエスカレが必要なタイミングは変わりますが、私の仕事では受注を狙うプロジェクトでも開発プロジェクトでもおおむね次のタイミングが考えられます。
タイミング | エスカレ内容 | |
1 | プロジェクトのきっかけになった話が整理され、プロジェクトを開始することがほぼ確定したとき | プロジェクトの概要・スケジュール、課題、ステークホルダー、リスクなど |
2 | 課題の解決方法が固まり上司の承認が必要になったとき | 課題解決策、リスク、必要な予算など |
3 | 上司から他組織への働きかけ等が必要になった時 | 働きかけが必要な理由、働きかけ後に目指すことなど |
4 | 見積提出前、あるいは外注発注前 | 自社の見積額あるいは外注見積額、プロジェクト収支状況など |
5 | 社内の意思決定会議前や決裁前 | 意思決定の目的、費用、スケジュールなど意思決定会議説明資料の内容 |
6 | トラブル発生時と、トラブル対処の中間報告又は解決報告時 | トラブル内容、対処策、解決の落としどころ、必要な費用など |
7 | プロジェクト完了時 | プロジェクトの成果、今後の展望など |
説明内容の構成
どんな説明にも共通するが、説明はまず全体像から順に説明していき徐々に具体化(ブレークダウン)していく。
私はどうしても自分が着手している細かい作業に目が行きがちで全体像を説明の構成に入れるのを忘れてしまう。そんな場合は必ずと言っていいほど全体像に関する質問を上司から受ける。

また、説明内容を構成するときには、QCDを意識すると全体像を捉えやすい。
- Q(quality) :品質 → 目指す姿や要求仕様とそれを達成するための課題と解決策、品質を維持する
ための体制など - C(cost) :費用 → プロジェクトに必要な費用や将来得られる収益など
- D(Delivery):納期 → スケジュール、プロジェクト完了時期など
エスカレのポイント
- (1)エスカレもスケジュールに組込む
-
私はエスカレをスケジュールすることを忘れがちになってしまう。そのため、プロジェクトの開始時のスケジュールとタスクを組立るときにエスカレタイミングも決めておくとよい。
- (2)想定QAを準備(エスカレのKY)
-
- PMから聞いて目からうろこだったのが、建設業界で事故を予防するために実施する「KY(危険・予知)」が、このエスカレにも当てはまるということだ。
- 上司からの質問:「K(危機)」 + 想定する:「Y」 = 「エスカレKY」 なのだ。
- 私は想定QAを考えるのが非常に億劫でめんどくさいが、これが「KY」なんだと考えると身近に感じて少し億劫な気持ちが和らいだ。
-
<エスカレKYの例>
- 協議先は協力してくれそうか
- 現地支店の課題は把握しいて、このプロジェクトでそれは解決できるか?
- 費用は当初事業計画に盛り込んでいたか
- 次のお客様の予算要求時期に間に合うか?
※エスカレKYでもQCDを意識すると想定質問が出てきやすい。
- (3)上司に不安を与えるエスカレは実施しない
-
- 不安がエスカレ報告を聞いても上司はGOサインを出すことはできない。例えば、課題があるがその解決策がないといったエスカレをするのではなく、その時点で考えられる解決策案や解決の方向性を示すことが重要だ。
- 私がしてしまう思考は、分からないものは分からないと思考を停止してしまうことだ。しかし、プロジェクト推進にあたっては、分からないことは想定でもいいので自分なりの考えを見つけ出すことが重要だと学んだ。そうすることにより、その想定を確かめる行為に着手できたりなど、分からないことが分からないまま膠着状態にならずに前進させることが出来る。
- このように、解決策のない課題をエスカレするのではなく、想定でもいいので解決策案を示した課題をエスカレし、上司に不安を残さず理解をもらいプロジェクトを前進させることが重要だ
■この記事を書いて気付いたこと
改めて、エスカレをスケジュールに組込むこと、そして、分からないことを分からないままにしておくのではなく、想定でいいので自分なりの解決策、あるいは解決の方向性を考えることの重要性に気付いた。
特に自分に不足しているのは、「分からないことに思考をめぐらすこと」だと気づいた。すぐに考えることをやめてしまうのは誰かが答えを出してくれるという甘え(すぐに人に頼る甘え)なのかもしれない。
しかし、自分で考えることを停止することは、自分の成長を自ら止めているということにも気づかされた。考えることを億劫に感じるのではなく、「困難なことを解決した先に得られる達成感を得ようじゃないか!」と自分を鼓舞していきたい。